道化
人を笑わせるような、おどけた言葉や動作。また、それをする人。
道化をする癖が抜けない。ニコニコ、ヘラヘラしてしまうから、あまり初対面の人から悪い印象を持たれた事がないのだが、内面とのギャップに時々潰れそうになる。ヘラヘラの裏で。
東京から1時間ほどの地方都市の公立小学校の教室で、私は道化を覚えた。小5の時、あぁ、ヘラヘラしていればあまり人から妬まれたり嫌われたりしないのだな、と思った。
小学校の教室にも確実に貧富の差があり、更に勉強の出来、要領の良さの差もある。何となく私は全部が人より出来た。それは、家にお金が少しあって親がお金を私にかけてくれていて、授業以上の教育、つまり塾や習い事などを幼い頃からさせてくれていたからなのだ。
あの頃、狭い狭い、だがそれが小学生にとって全ての、教室という世界で、暴力や暴言で解決する事が全てだった。頭が良くて育ちが良い奴は片っ端から不良に目をつけられ、虐められた。
私は道化をして、何も考えてない、バカになる事で自分を守ることにした。
いつしか癖になってしまって、大人になった今もヘラヘラとバカを続けてしまう時がある。緩やかな自傷行為ということに、本当はずっと、12歳の頃から気付いていた。心を守る為に少しずつプライドを削っていくこと。仲間外れにされる痛みと、自尊心を削って道化をする痛みの天秤。未だに私は、どちらを重くしたら良いのか分からない。そんな天秤壊していいよ、と言われるのを呑気に待っている、やはり本物のバカなのかもしれない。
でもね道化師、私は嫌いじゃないよ。上手く自分を守って、誰かを笑わせるのなら、それで良い。いつかきっと、自分が一番笑顔になれるように。
誰も傷付けないお笑いなんて本当はないのかも。でも絶望じゃない。人には人がいるし、強さと心があって良かった。