kikurageoisii’s diary

東京のOL23歳 

1996

週末、25になる。
新卒で入った会社は2年で辞めてしまったし、仕事が向かなすぎて鬱みたいになった。といっても私の鬱は冗談みたいなやつで、今まで好きな事しかやらなかった人生のツケだと思う。冗談みたいな鬱と冗談みたいな暇を持て余して始めた飲み屋の女がいつしか週6になった。楽しいし、向いているんだと思う。お金も沢山貰えるし、貯金も少しは出来た。なんだか会社員の時より働いている。でもなんだかなあ。ちゃんと、私は生きてる?

 

大金持ちでは無いけれどそこそこ裕福な家庭で大切に育てられた自負がある。中学から私立の女子校。大学まで女子校で育ったおかげか泥みたいな恋愛もいくつか経験した。1番声をかけやすい容姿なのはとっくに自覚しているのに穴モテをモテと勘違いしているチョロい女とは一緒にされたくない、という妙なプライドだけを持ち続けていたらもう周りは結婚しだして、無駄なプライドを捨てようとした頃には性欲がなくなっていた。飲み過ぎかストレスか分からないけれどカンジダになって、好きな人に移して浮気を疑われている気がする。それがまたストレスになったりして……。何をやっているんだろう、私。自分でお金を払って予約したエステサロンですら、最近は行けなくなって、連絡すら出来なくなって。保険証も交換していないから病院にも行けない。年金も払うお金はあるのに支払い方がよく分からなくてついに赤い紙が来てしまった。優等生だった小学生時代の自分に見せる顔がない。生活力を怠惰さに吸い取られいる。退化だ。体は確実に歳をとるのに、脳や行動力の大事な部分は退化していっている気がする。

 

昔はクラブや飲み会に行くのが好きだった。知らない人から声を掛けられてモテた気になって、訳も分からぬまま体を許して、少し落ち込んで帰るけれど、また夜の街に行く。
この前久しぶりにクラブに行ったけれど、金にものを言わせたVIP席にふんぞり返って高い酒を飲み、フロアに密集する人達を見下している自分に気付いた。昔の自分を見下していた。そして昔の自分が見下していた年増の女になっていた。爆音の中で、私の中のひとつの時代が終わった音がした。
もう、モテたい訳では無いし、酒を飲んで暴れると次の日に深く深く沈んでしまう。知らない人と1から関係構築をする手間がたまらなく嫌だし、たまに、好きな人を失う恐怖がものすごいことになってしまう。愛する人や生活を失いたくないから、リスキーな事はしない。暴走列車の如くリスクばかり取っていた昔の自分と真逆だ。しかし、当時の自分が幸せだと思っていた未来に仮に私が居ても、その幸せが崩れる恐怖が常に隣り合わせだという不幸からは逃れられない。どこにもいかないでね、私の愛する生活。