kikurageoisii’s diary

東京のOL23歳 

2022

ひとりぼっちの時より、自分だけ立ち止まったままなのを思い知らさせた時の方が人は孤独だ。

 

周りがどんどん先に進んで世界を切り拓いている中、もがきもせず、ただ私だけ時間が止まっているようだ。

 

 東京はとめどない。何にでもなれると思っていた。リクルートスーツを着て、真っ黒なパンプスで叩く地面。つい数ヶ月前まで能天気に遊んでいた大学生たちが駒のように押し込まれた就活イベントで、つい数年前まで能天気な大学生だった若手社員が話す耳慣れないビジネス用語は、私の耳を熱くした。今から何にでもなれるという根拠のない全能感と無敵感。世界に肯定されている。木枯らしさえも背中を押すような気がしていた。2018年、冬。

 

 風が突き刺す。もう着ないと思っていた大学の頃の服を引っ張り出して着てみる。何も変わらない気がする。多分、確実に老けているし昔とは違うんだろう。でもなんだか当時の服を着られる自分が悲しくて、あの頃飲めなかった苦いお酒を飲む。能天気なのか、青さがなくなってしまったのか、泣くまで深く考えたり動けなくなるまで疲れる事が少なくなった。駄目だ。冬は寒くて痛い。寒さにエネルギーを吸い取られると言い訳して、立ち止まったままの自分を甘やかしている。

 大抵の休日はベッドから起き上がれないし夜になっても眠たい。怠けてばかりの自分で、新年会や同窓会は行く気になれない。駅までの徒歩10分が限りなく遠く感じる。昔の友人の活躍を聞く勇気と体力と心の容量がない。みんな、前はあんなに遊んだりセックスしたりしてたのに。私だけ、あの時の方が色鮮やかだ。みんなは日々にどんな綺麗な色を塗って生きているんだろう。汚れたフィルターで見ると、どんな景色だって濁って見える事を知っているか?

 気晴らしに出掛けるためにも、眠気を押し殺して顔を洗って化粧水と乳液をつけて、髪の毛にストレートアイロンを当ててわざわざ寒い格好に着替えて化粧をしてセットをして、今日も大丈夫だ、と言い聞かせて寒空の下を歩く。想像しただけでどっと疲れてしまう。でも、引きこもって見るネットも友達の活躍も痛い。情報社会の豊かさが確実に心臓を突き刺してくる。

 新年早々保険証とカードをなくし、風邪をひき、収入は減り、またクレジットカードをなくして、しまいには胃腸炎になり、落ち込む様な事が続いたけれど、当たっていたら全てが帳消しになるな、と思って去年買った年末ジャンボの当選発表を見た。300円しか当たっていなかった。そうだよな。そんなうまいこといかないよなあ。でも私はまた微かな望みをかけてドタバタと生きていく。ちょっとでも綺麗な色が塗れたらいい。2022年、冬。

 

おはよう、冬。