小さい頃から泣かない子供だった。
"耐えるが美徳"とされる時代は終わっていたのに、美学なんて言葉を知らないうちから、私の美学、私に出来る強がりは泣かないことに決まっていた。
幼稚園でも小学校でも、すぐに泣く同級生がどうしようもなく嫌いだった。
ドラマや映画を見ても家族や友達の前で涙を見せることがこの上なく恥ずかしかった。
最近すぐに泣いてしまう。意味もない涙が出てくるのが虚しくて、こんな自分じゃなかったことが悔しくて、余計に涙が止まらない。
本当に泣きたい時の涙の意味がなくなってしまうくらいに毎日悲しくて、昔の自分からは考えられない程涙が溢れてくる。
一生に流す涙の量が決まっているのなら、流し終わってしまうのではないか。
毎日私だけズルをしているみたいだ。
毎日はすごい速さで過ぎていくし、夜も使い果たしてしまう。寂しさは鳴るし、不穏な悲鳴を愛せる程の才能も強さもない。
泣かない事だけが取り柄だった少女は泣いてばかりの大人のなり損ないになってしまった。
私は私が恥ずかしい。
明けない夜なんて本当にあるのかな。
枯れない涙を拭う手が止まらない。