kikurageoisii’s diary

東京のOL23歳 

劇場

「ここが1番安全な場所だよ。」

人が壊れていくのを見るのは辛い。

健気で、素直すぎるくらい感情に従順なさきはだんだんと安全な場所にいるまま壊れていった。

大切なものを失ってから気付くなんて平凡なテーマでは無いことは確かだが、今の私には永田の感情の全部や、作者又吉直樹の描こうとした真意を全て汲み取ることは出来ない。

ただ私も永田と同じくさきの明るさにはイライラしていたし、心から救われていたことに後半になってやっと気付いた。

さきの明るさも、永田の自分に対するイラつきも、それをさきに向けてしまいさらに自分が嫌で情けなくなる気持ちも分かった。

 

 清く正しいものは、痛い。安心を与えてくれる代わりに、醜い自分に酷く突き刺さる。

いつからかいつもそこにあると思い込み、甘えて無性に壊したくなる。正しければ正しいほど、自分を否定されている気になってしまうものだ。

本当は最初から気付いているのに、搾取していることを気付かないふりをして壊すまで甘え続けてしまう。確かなものなんてひとつもないのに。後から後悔して気付くのだ。

当たり前の事を気付くのにどうして私達は傷付けて傷付かないといけないのだろうか。

 

ただ、「平凡ってなに?」と無邪気に聞くあの時のさきが、輝いていて眩しくて壊したくて綺麗で甘えたかった気持ちが私にも分かった。